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2014-11-21

世間一般で大切らしい「目に見えないこと」とは何か

昨晩人と話していて、しみじみ「目に見えないことが大切なんだよねえ」という結論に達しました。
これものすごく一般論的な結論なのですが、それに対し個人的に思うことがあるのでここに書き残しておきます。

「目に見えないこと」は対象への情動である

「大切なことは目に見えないからね」ーと言ったのは、サン=テグジュペリ著「星の王子様」です。非常に著名であるがゆえに、きっと幼少期にお母さんと一緒に読んだことがある方も居るでしょう。
今僕が再読して改めてしみじみ感じるのは以下の引用部分です。

「君がバラのために使った時間が長ければ長いほど、バラは君にとって大切な存在になるんだ。」

言い換えれば、いかに目の前の対象に時間を費やしたかでその対象との関係性の深さを決定するということ。もっと具体的に言えば、いかに同じ単位時間上で自分の感情を揺り動かす程度が大きかったのかです。この感情の揺れ動きを、情動と言います。英語言えば、emotion。脳内に扁桃体というアーモンド状の組織があり、ここで生産される。

これは色んな場面でそうであると言えるでしょう。恋愛ならば、その相手といかに長い間過ごしたかもそうですが、何よりその相手に対していかに感情を奮い立たせて向かったかが、分かれた後も想い出に残る者だと認識しています。
住んでいた家もそうかもしれません。辛いとき、楽しいときを過ごした家はやはり愛着が湧きますし、我々にとっては唯一の代えがたいものです

感情を疎かにすればたちまちその行為は空虚なものとなる

反対に、どんだけ場数を重ねてもどれだけ回数を重ねても、時間単位当たりの感情の動きが少なければ、それは得たものが少ないと言えるでしょう。
例えば、顕著なのが読書でしょう。当ブログでも以前触れていますが、著者に深く感情移入し、なりきるくらいになることで緻密にその本の論理を汲み取ることが出来ます。

それこそがライフネット生命CEO出口氏の言う「きちんとネクタイを締め、正座をして本を読む」姿勢なのでしょうし、ジョン・キム氏の言う「本当に深く没入し、没入して本を読んでいくと、著者と自分の間には境界というものが消え」ることなのでしょう。

しかし、そこでもしなんの感情移入もなしに、なんの情動もなしに知識を得るためだけの読書をしていても、なんの精神的成長は期待できません。ほんとに何百冊読んでも、あたまでっかちで人の気持ちが分からん人間に育つでしょう。
もちろん、本を高速で大量に読んで一気に専門分野を理解し、アウトプットにつなげなければならない職業の方々もいらっしゃいます。そういう人達は元々読書に精神的な成長など期待してはいないし、期待しているのは効率の良い知識の獲得です。

また例えば英語学習もそうです。大学受験でお世話になっていない人は居ないであろう安河内先生は著書で「登場人物になりきって音読すること」の必要性を説いてらっしゃいます。
これは音読の効果を最大化するためでです。もし音読をするにしてもただ声に出して読むだけの、まるで日本の悪しき英語教育そのままの棒読みであるならば、全く語彙は頭に入ってきませんし、学習そのものもしんどいです。気持ちを込めた音読には情動が存在するのです。漫画「花もて語れ」でも、「視点の転換」という朗読の方法論
を通じて、全く同じ事を言っています。

いまどきの言葉で言えば、共感力

最近の言葉でいえば、共感力というやつなのだと存じます。相手の立場に立って考え発言できること、ペルソナを設定するにしても鮮明にその像を浮かべて企画すること。人間世界、論理だけなんかでは回っていなくて、ほとんど感情で動いています。こう考えると、その二人称の感情に巧く移入できる人こそ、良い仕事ができるのだろうと思います。

難しいのは、やはりそういった感情移入は時には自分を否定するものだからです。僕は先般「オリエンタリズム」を読んだとき、強烈な自己否定を感じました。あ、ここで言われているオリエント(東洋)を外側から研究対象としか見ていないオクシデント(西洋)とは自分そのものだ、と。

昔から薄い自己啓発本ってなにがイケてないって、やはり徹底的に何が何でも「自己肯定」するところにあると考えていました。もはや一種の思考停止。昔からなんかわからんけど言いようのない気持ち悪さを感じるポジティブ人間もそうです。

思考するとは、ひたすら自己肯定するための材料集めをすることではありません。材料と向き合い、時には自己否定され、それでも自分はどう生きていくのかを考えることです。

そろそろ、理屈っぽい人間と振る舞うの、辞めにしたい。この記事自体も個人的な自己否定です。もっと情動が分かる人になります。

参考文献

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